研究課題
基盤研究(C)
1. HDGF受容体の同定と細胞内シグナル伝達機構の解析。グルタチオンアガロースを用いてリコンビナントHDGFカラムを作成し、HuH-7肝癌細胞の細胞抽出液をアプライし、よく洗浄後、グルタチオンで結合蛋白を溶出し、2次元電気泳動にて解析した。HDGF結合蛋白を質量分析にて同定した。既知の増殖因子受容体の一つをHDGF受容体の候補として同定した。HDGF受容体を欠損する細胞を用いて、HDGF受容体を遺伝子導入したHDGF受容体高発現株を作製した。HDGF受容体高発現株細胞抽出液を用いた抗HDGF抗体による免疫沈降(IP)後、抗HDGF受容体抗体によるWestern blot、また抗HDGF受容体抗体によるIP後、抗HDGF抗体によるblotにて、相互の結合を確認した。ヨードラベルしたHDGFを用いて、HDGF受容体高発現株および親株でScatchard解析し、HDGFの特異的結合を確認した。HDGF受容体高発現株および肝癌細胞株を用いて、HDGF投与により細胞増殖が促進されること、更に、HDGF受容体蛋白がリン酸化され、細胞内のERKがリン酸化されることを明らかにした。2. HDGF高発現、または発現低下により変動する遺伝子の解析。HepG2およびSK-Hep-1肝癌細胞を用いて、HDGF高発現株、更にshRNAを用いてHDGFノックダウン株を作成した。HDGF高発現およびノックダウンしたHepG2肝癌細胞を用いて、細胞レベルおよびヌードマウスで形成される腫瘍における遺伝子発現変化をDNA chipにて解析した。細胞および形成された腫瘍においてHDGFにて発現誘導されている遺伝子として6遺伝子、抑制される遺伝子として4遺伝子を明らかにした。3. HDGF発現抑制によるin vivoでの肝癌の増殖抑制の解析。HDGFshRNAを用いてSK-Hep-1細胞のHDGFノックダウン細胞株を2クローン作成した。抗HDGF抗体にてHDGF発現抑制を確認した。HDGFshRNAによりHDGFをノックダウンしたSK-Hep-1細胞株を用いて、in vivoおよびin vitroで細胞増殖能を検討した。HDGFノックダウン細胞は軟寒天培地での足場非依存性増殖能は抑制された。HDGFノックダウン細胞では親株およびMock細胞に比して、ヌードマウス皮下での腫瘍形成能が抑制された。以上より、HDGF発現抑制により肝癌増殖を制御できる可能性が示唆された。4. HDGFのPromoter領域の解析。HDGF遺伝子の上流について、塩基長の異なる数種類の遺伝子をPCRにて獲得し、dual-luciferase vector に組み込み、HDGFのpromoter領域のdual-luciferase reporter assay系を確立した。このHDGF promoter luciferase reporter assay系を用いて、ビタミンK2によるHDGF発現抑制がHDGFのpromoter領域に作用していること、その作用部位が-1~-150に存在することを明らかにした。更に、このHDGF promoter luciferase reporter assay系にて、IFNによりHDGFの発現が制御されることを明らかにした。HDGFの発現制御法を探索する上で重要である。5. 肝癌患者血漿中HDGF濃度の測定。我々が確立したHDGF ELISA測定系を用いて、慢性肝疾患患者血漿中のHDGF濃度を測定した。肝癌患者では、慢性肝炎、肝硬変患者に比し、有意に陽性率および血漿HDGF値が高値であった。肝癌のサイズが大きいほど、病期が進行するほど高値を示した。興味あることに、AFP陰性肝癌の約半数に血漿HDGFの上昇が認められた。血漿HDGFは、特にAFPを補完する肝癌の腫瘍マーカーとして利用できる可能性が示唆された。
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