研究概要 |
In vitroの研究成果:GFPトランスジェニックマウスの骨髄から採取した単核球が培養液中にVEGFおよびPDGF-BBを添加し,7日間培養することで血管内皮前駆細胞(EPC)および平滑筋前駆細胞(SMPC)に分化することをCD31,flk-1、・SMA抗体を用いたFACS解析にて明らかにした。さらに、分化させたEPCおよびSMPCをセルソーターにて約90%の効率で分離できた。アデノウイルスを用いた可溶性flk-1cDNAの遺伝子導入は長時間かけて導入することで導入効率が約70%に改善された。また、可溶性flk-1cDNAを遺伝子導入したEPCとSMPCの増殖能はEPCで遺伝子導入を行っていない細胞に比べて抑制された。In vivoの研究成果:マウスの骨髄から採取培養したEPCおよびSMPCをヌードマウスの皮下に肝がん細胞を接種して作成した坦癌マウスの尾静脈から10^6個投与し7日目に屠殺し肝癌組織への遊走を確認した。肝癌組織内へ遊走したEPCは一部腫瘍血管内皮細胞へ分化し、SMPCの一部は周細胞へ分化していたが多くは腫瘍の間質に存在していた。次に、腫瘍組織への遊走能をEPCとSMPCで比較した結果、両群に差はなかった。可溶性flk-1cDNAを遺伝子導入しないEPCおよびSMPCを投与した場合はEPC投与群のほうが腫瘍増大が著しかったため以後の検討はSMPCで行うこととした。可溶性flk-1cDNAを遺伝子導入したSMPCをヒト肝がん細胞株であるKYN-2,HAK1-B細胞をマウスの皮下に接種したモデルに尾静脈から一回につき10^6個、週1回投与し、経時的に4週間観察すると腫瘍の増大が抑制された。KYN-2細胞を肝に接種したモデルでも可溶性flk-1cDNAを遺伝子導入したSMPCを投与することで腫瘍の増大は抑制され、生存期間も延長した。また、腫瘍内血管密度は治療群で抑制されていた。腫瘍組織でのVEGFの産生は治療群で亢進していた。 体重減少、骨髄抑制、肝障害など重篤な副作用は観察されなかった。
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