私達は、低出力の衝撃波を体外から虚血心筋に照射すると冠動脈の血管薪生が効率よく誘導され心筋虚血が著明に改善されることを、ブタ慢性虚血モデルおよび重症狭心症患者で既に報告している。本研究は、低出力体外衝撃波治療による心筋虚血改善作用の分子機序の解明を目的とする。 (1)培養細胞を用いたin vitro実験系 ヒト血管内皮細胞(HUVEC)を24時間培養した後に衝撃波を照射した。衝撃波照射24時間後にmRNAを抽出してPCRを行い、衝撃波治療が各種の血管増殖因子の発現に与える影響を評価した。VEGFをはじめとした各種の因子が増減しており、現在、それぞれの因子について詳細な検討をおこなっている。 また、血管平滑筋細胞や心筋細胞を用いた予備実験もおこなった。 (2)大型動物(ブタ)を用いたin vivo実験系 ブタ急性心筋梗塞(虚血再灌流モデル)において、梗塞作成3時間後に低出力体外衝撃波治療を開始した。4週間後に心臓カテーテル検査・エコー検査などをおこない、心機能を評価したところ、衝撃波治療群では、対照群に比して、慢性期の左室リモデリングが軽減されることが確認された。現在、心筋組織を用いて、免疫組織学的検討および各種血管増殖因子のタンパク発現などについて検討をおこなっている。 本研究により、低出力の衝撃波治療が非侵襲的に虚血を改善する詳細な機序が明らかになれば、心臓のみならず、再生医療全般への応用が期待される。
|