研究課題
慢性心不全は、欧米諸国のみならず、高齢者社会を迎えている我が国においても増加傾向にある心臓病終末像である。その中で、左室拡張障害・心筋細胞の硬化・心室線維化を特徴とする拡張不全型心不全に対する薬物療法は、依然として確立されておらず、新たな治療法の開発が望まれている。本研究では、動物モデルにおいて、心筋拡張障害・心室線維化におけるRhoキナーゼ経路の分子機構の解明および拡張不全型心不全における治療としてのRhoキナーゼ阻害の検討を行った。1. 心筋拡張障害におけるRhoキナーゼ経路の分子機構の解明拡張不全心筋におけるRhoキナーゼ活性を、高食塩負荷ラット心筋を用い、負荷心筋組織においてRhoキナーゼ活性が亢進していることを明らかにした。2. 心室線維化におけるRhoキナーゼ経路の分子機構の解明食塩負荷Dahlラット拡張不全心筋における心筋線維化進行・コラーゲン代謝異常がRhoキナーゼ亢進と相関していることを明らかにし、さらに心エコー所見・心臓カテーテル検査所見による心筋圧負荷とRhoキナーゼ活性が相関していることを明らかにした。3. 拡張不全型心不全における治療としてのRhoキナーゼ阻害の検討食塩負荷Dahlラットを用い、プラセボ群とRhoキナーゼ阻害薬であるファスジル投与(低用量・高用量)群を作成し、ファスジル投与が心筋線維化の進展および左室拡張能を改善させることを示した。4. 拡張不全型心不全患者における急性効果としてのRhoキナーゼ阻害の検討拡張不全型心不全患者に、Rhoキナーゼ阻害薬であるファスジルを急性投与し、心筋収縮能・拡張能に対するファスジルの急性効果を心エコー所見および心臓カテーテル検査で評価したが、心拍出量の軽度増加および心筋収縮能の軽度改善を認めた。
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Hypertension Research (in press)
J Cardiovasc Pharmacol 51
ページ: 317-326