1. 心筋症の試料収集ならびに家系調査: 北陸地方を中心に心筋症の調査を行い、新たに肥大型心筋症患者(発端者)5名、拡張型心筋症患者(発端者)1名を検出し、総計肥大型心筋症400家系、拡張型心筋症148家系を同定した。これらの患者に関して、計画実施案に従ってインフォームド・コンセントを得た後、家族に関する聞き取り調査、発端者ならびに家族の心電図、心臓超音波検査、遺伝子診断用採血(EDTA血10ml)を実施した。これまでに既に集積していた肥大型及び拡張型心筋症も含めて、遺伝子変異を検索した。 2. フォスフォランバン、心筋リアノジン受容体、及びサルコメア遺伝子変異の検索: 心筋症発端者に関し、末梢血白血球からgenomic DNAを抽出し、PCR-SSCP法によりフォスフォランバン、心筋リアノジン受容体、およびサルコメア遺伝子変異のスクリーニングを行った。PCR-SSCP法にて異常バンドが認められた場合、直接シークエンス法を用いてDNA配列を解析し、RFLP法にて確認を行った。 3. フォスフォランバン遺伝子を含んだ発現ベクターの作製 フォスフォランバンのコーディング部位がエクソン2のみに含まれていることを利用し、ゲノムDNAのPCRにてコーディング部位のみを増幅した。これによりMutagenesisの手間を省き、正常者及び変異保因者の配列を有するcDNA配列の作製に成功した。現在、増幅した配列をプラスミドベクターpcDNA3.1(+)(Invitrogen)に導入し、野生型/変異発現ベクターを作製する段階である。 4. サルコメア遺伝子変異導入マウスの解析 サルコメア蛋白のひとつであるβミオシン重鎖遺伝子変異p.Met531Argを導入したトランスジェニックマウスの作製に成功した。このマウスを解析することにより、左室肥大の進展、および心不全進行のメカニズムの一端を明らかにすることができた。
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