研究概要 |
高血圧心には心筋肥大とともに線維化がみられ,拡張能を低下させ心機能不全を来すと考えられているが,実際に医療機関を受診し投薬治療を開始する際,患者はある程度の罹病期間を経てすでにいろいろな程度の線維化病変が形成されているはずである。そこで,すでに出来上がった病変が可逆的か,薬剤治療が可能かどうかを明らかにするために,7週齢Ba1b/C系マウスにAngiotensin II(AngII)を500ng/kg/min4週間投与し高血圧モデルを作成した。投与中止後4週,12週,20週で経時的に摘出した心筋組織を,組織学的に,および定量的RT-PCRにより解析した。AngII投与後,収縮血圧は150mmHg程度に上昇し,中止後2週で正常化した。AngII投与により心体重比,心筋細胞横径は増加したが,中止後4週でいずれも有意に減少し,12週までに正常化した。BNPのmRNA発現レベルも,中止後4週で有意に低下し,12週ではコントロールと差が認められなくなった。一方,線維化面積率は,4週間のAngII投与で増加したが,中止後少なくとも20週まで各群とも変化が見られなかった。初期の線維化促進因子の-つであるテネイシンCの発現レベルは,中止後4週で低下した。しがたって,高血庄による心筋細胞肥大は比較的早期に回復しうるが,一度形成された間質線維化病変ゐ消褪には,より長い時間を必要とすることが明らかになった。
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