研究概要 |
高血圧心で、すでに形成された線維化病変が可逆的で治療により軽減あるいは消失させることが可能かを明らかにすることを目的として、平成19年度に引続きマウスにangiotensinIIを4週間負荷して心臓線維化を誘導したのち負荷を中止,20週まで回復過程の経時的変化解析した。平成19年度の結果により、心肥大は中止後12週までに正常化するが、膠原線維面積率で線維化率を評価するとは20週まで改善が見られないことが明らかになったため、本年度は線維化病変のコラーゲン以外の構成分子など質的変化について検討した。病変進展初期に沈着すると考えられる分子の一つ分子ヒアルロン酸は、中止4週後に若干沈着が減少する傾向が見られたが20週後まで明らかな変化は見られなかった。分解系について、リアルタイムRT-PCRにより酵素MMP-9のmRNAレベルの変化を検討したが、病変そのものが比較的微小で徐々に変化するモデルであるため有意な変動を認めることができなかった。次に、線維化病変の分解消失を制御する標的分子の同定を試みた、平成19年度には、線維化制御因子としてしられるマトリックス分子テネイシンCの発現が比較的短期間で有意に減少することが明きらかになり、テネイシンCはin vitroでMMPの発現、活性をあげることが知られているため、テネイシンCに注目した。心臓特異的テネイシンC過剰発現マウスを作成し、野生型、さらにノックアウトマウスで心筋組織のMMP活性をzymographyで検討したが有意な差は見られなかった。したがって、高血圧による心筋細胞肥大は比較的早期に回復しうるが、一度形成された間質線維化病変は高血圧のコントロールにより構成成分が変化しうるが、完全な消槌には、積極的治療を行わなければ長い時間を必要とするとことが示唆された。
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