研究課題
近年、プロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ)が多発性骨髄腫に対する抗がん剤として臨床応用されている。また、"奇跡の抗がん剤"といわれるチロシンキナーゼ阻害薬イマチニブが小胞体ストレスを介して心不全を引き起こすことが報告された(Nature Medicine 2006)。これらのことより、抗がん剤による難治性心不全発症に小胞体-ユビキチン・プロテアソーム系が関与することが示唆される。私たちは、プロテアソーム阻害薬が心筋アポトーシスを誘導すること、ならびに、このアポトーシスは小胞体シャペロンGRP78過剰発現により抑制されることを見出した。以上より、抗癌剤による心筋障害が小胞体ストレス抑制により軽減されることを示した。脳性利尿ペプチド(BNP)は心不全患者の病態ならびに予後評価に用いられている。しかしながら、肥大心や高齢者において非特異的上昇をきたすこと知られている。実際、マウス圧負荷心臓では、肥大期ならびに不全期のいずれにおいてもBNP発現が増大する。一方、小胞体発信アポトーシスシグナルCHOPは不全期に強く誘導が認められたため、心不全患者の重症度の新たな指標としてのCHOP測定の有用性について特許出願した(特願2006-016514)。この特許出願を受けて、民間企業とのCHOP測定キット開発に着手した。培養心筋細胞に小胞体ストレス誘導剤を添加し、開発中のCHOPキットを用いて培養液を検討した結果、CHOP濃度の上昇が確認できた。現在、心不全患者より得られた血液サンプルを用いて、血液中CHOP濃度と心不全重症度(NYHA分類)の関連ならびに既存の指標であるBNPとの相違を検討中である。
すべて 2007
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Circulation 116
ページ: 1226-33