近年、細胞内蛋白質分解機構が、細胞の基本的な働きに不可欠である。特にユビキチン-プロテアソーム系は、選択的に蛋白質を分解する働きを担い、アポトーシスを含む、生体の様々な高次機能の制御や環境ストレスなどに対する恒常性の維持に必須である。本年度は、心血管リモデリング、特に虚血再灌流障害におけるユビキチン・プロテアソーム系の役割を検討した。以前、我々は心不全におけるユビキチン・プロテアソーム系の関与を報告した。しかし、プロテアソームの活性調節機構は未だ不明な点も多く、病態への関与も完全には明らかになっていない。そこで、我々はプロテアソームの活性調節メカニズムならびに病態への関与を正常心ならびに虚血心にて検討した。外因性PKA刺激として、イソプロテレノールの選択的投与を、内因性PKA刺激として、虚血プレコンディショニング(IP)を用いた。外因性ならびに内因性PKA刺激によりプロテアソームの活性上昇が認められた。さらに、プロテアソームサブユニットの集合増加、活性上昇を認めた。麻酔開胸犬モデルを用い、IPによるプロテアソーム活性上昇の虚血再灌流に対する関与を検討した。偽手術群では、虚血再灌流後、心筋にユビキチン化蛋白の蓄積が認められた。虚血再灌流前にIPを施すと、そのユビキチン化蛋白の蓄積は軽減された。従って、IPによるプロテアソーム活性上昇に伴い、虚血再灌流後のユビキチン化蛋白の蓄積を軽減させることが示唆された。以上から、PKA刺激により心臓プロテアソームのサブユニットの集合増加、活性上昇が証明された。また、虚血IPによるプロテアソームの活性上昇が梗塞後心筋における蛋白質品質管理に関与することが示唆された。
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