臨床において、急性冠症候群の原因である動脈硬化不安定粥腫の診断方法は確立されておらず、その新規診断法として位相差X線CTという方法にて動脈硬化巣の質的診断を試みた。本年度は、マウス動脈硬化巣の撮影と、その組織学的な解析を行い、データを集積することで位相差CT画像を用いた動脈硬化巣解析に必要な基本的な情報のデータベースを確立できた。マウス動脈硬化巣を使用した実験では、組織学的に分析した組織性状を位相差CTにおけるCT値にて鑑別できることを証明できた。さらに、当初平成20年度に予定していたタルボ法による撮影も開始しており、その問題点なども把握できつつある。引き続き臨床での非侵襲的冠動脈不安定粥種の診断法確立のため研究をすすめていく。 現状では確定診断が困難な拡張型心筋症のX線回折法を用いた新規診断方法の開発に関しては、今年度に予定していた拡張型心筋症モデルマウスの撮影が順調に進み、少なくともMLP遺伝子欠損マウスにおいて、ミオシンとアクチンの格子構造にバラツキが存在していることが証明できた。さらにマウスに薬物負荷を行い各種薬物の効果を判定することにも成功し、新規の心機能評価方法として期待できることが示された。さらに、臨床での拡張型心筋症患者の心筋生検サンプルでの撮影に進めており、まだ解析は終了していないが約20検体ほどの撮影に成功している。解析を進め、臨床においてのこの検査法の有用性を検討し、新規診断方法としての意義を検討する。
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