心筋細胞の興奮伝播はギャップ結合により制御されている。これまでの研究で、我々は心筋細胞への高頻度電気刺激により、アンジオテンシンIIがギャップ結合構成蛋白のconnexin (Cx)43の発現量を増加し、興奮伝播速度を増すことを報告した。本研究では、アンジオテンシンIIの下流であるアルドステロン(Ald)のCx43におよぼす影響を検討した。ラット新生仔培養心筋細胞に種々の濃度のAldを添加し、Cx43発現量の変化を経時的に検討した。Cx43発現量変化はwestern blot法、RT-PCR法、免疫染色法にて測定した。心筋細胞の興奮伝播速度(CV)の測定multi-electrode extra-cellular potential mappingシステムを用いた。10^<-6>〜10^<-4>M Ald添加にて、12時間後にCx43遺伝子及び蛋白質発現量は有意に減少した(p<0.01)。10^<-8>M Aldは、Cx43遺伝子及び蛋白質発現量を24時間後に約1.3倍増加させ(p<0.05)、CVは1.25 倍増加した。Aldのgenomic効果はmineralocoricoid受容体(MR)またはglucocorticoid受容体(GR)を介することが知られている。Aldの濃度依存性Cx43発現量調節作用と作用受容体の関係を明らかにするために、MR拮抗薬(eplerenone)又はGR拮抗薬(mifepristone)を前投与してAldの効果を解析した。 10^<-4>M AIdのCx43発現量抑制作用はGR拮抗薬のみにて抑制され、10^<-8>M AldのCx43発現量贈加作用はMR拮抗薬のみにて抑制された。また、AldのCx4増加作用には、一部MAPK系、PKCを介することが証明された。異常より、Aldは濃度依存性に心筋細胞Cx43発現量に異なる影響を与え、電気生理学的特性を変化させた。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の制御は不整脈の新しい治療法となる可能性がある。
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