最近、細胞内にはタンパク質に翻訳されないnon-codingRNAが多数存在することが明らかになり、このnon-codingRNAのうち、機能を持つものが機能性non-codingRNAと呼ばれるが、中でも短鎖RNAであるmiRNAは、ゲノムによりコードされる内在性遺伝子であり、分化・発生段階特異的あるいは細胞種特異的に発現が制御されており、標的とする遺伝子産物発現を抑制する機能を有し、様々な生物機能に関わると考えられている。本研究課題では、心血管細胞の分化を含む細胞機能におけるmiRNAの発現と役割について検討することを目的とする。初年度である平成19年度には、ES細胞の心筋細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞への分化を誘導し、その過程でのmiRNA発現の変化をマイクロアレイを用いてプロファイリングを行い、明らかにした。さらに血管内皮細胞のマトリゲルにおける血管様構造の形成においても、多数のmiRNA発現に変動が見られることを明らかにした。miRNAの生成に必須のRNase Dicerの過剰発現、shRNAによるノックダウンの系を確立し、DicerはES細胞においては、細胞分化に必須であり、ノックダウンにより心血管細胞への分化が著明に抑制されること、また、血管内皮細胞においては、Dicerは、細胞増殖、遊走、血管様構造の形成に重要な働きをしており、またアポトーシス刺激時の細胞死耐性にも関与することを示した。さらに筋特異的miRNAであるmiR-1は筋細胞分化において、様々な段階で促進的に働くが、他の細胞腫への分化を妨げないことも示した。これらの結果より、miRNAが心血管細胞においてダイナミックに調節を受け、その細胞機能に深く関わることが明らかとなった。
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