我々はENUを用いたメダカ変異体スクリーニングによりBig Heart Tube:bht心室筋形成不全変異体を得た。bhtはその名のとおり、心臓が太いtubeを呈する突然変異体である。メダカは単心房、単心室であるが、受精2日頃から心臓原基が観察され拍動が開始する。3日目にはルーピングが起こると同時に心房、心室が形成され、血液循環が認められる。bhtの表現型はこの3日目に観察される。野生型の心臓は心房と心室が連動して二相性のリズムで拍動するのに対して、bhtの心臓は心房、心室の境界は不明瞭であり拍動も一相性の単純なリズムである。bhtは心室の内腔が盲端になっており、静脈系、動脈系は正常であり心房が拍動するのにも関わらず、心室筋が正常に形成されず心室内腔が大動脈に開通しないという表現型であった。 ポジショナルクローニング法によって原因遺伝子が染色体上のどの位置を占めているか限定していった。現時点で約1300個体の変異体胚を解析し、9番染色体上の染色体マーカー12338と12419の約200kbの範囲内にbht原因遺伝子が存在することが判明した。メダカゲノムデータからこの約200kb範囲内には候補となる遺伝子が5つあることが分かっている。既に4つのシークエンスが終了し遺伝子変異がないことが確認できた。ポジショナルクローニング法により候補遺伝子は、versicanというコンドロイチン硫酸プロテオグリカンに絞られた。versicanのエクソン領域は非常に長大ではあるが、原因遺伝子の可能性が非常に高く現在シークエンスを全力で進めており、遺伝子変異が発見されることを確信している。
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