研究課題
小型魚類は心臓や脊椎など哺乳動物には認められない再生能力があることを研究申請者はこれまで示してきた。小型魚類ゲノムプロジェクトは完了しており、順遺伝学的アプローチが容易なこと、組織再生に要する時間が短いことなどより、再生研究の有用なモデル生物として使用されるようになってきている。本研究は化学変異剤により作製した変異体を使って、再生という現象の開始を担う遺伝子を発見することを目的として行われた。再生現象は大きく分けて、組織・細胞の脱分化で始まる再生芽形成過程とパターン形成をはじめとした再分化過程の2過程に分けられる。後者は胚発生の繰り返しであるという証拠が得られている。全く異なる組織、細胞による四肢やレンズの再生、心臓の再生が、実は共通の分子メカニズムによってその再生開始を引き起こしていることを、マイクロアレイの解析により明らかとした。小型魚類が強い再生力を有するのは分化した組織から、脱分化という過程を通して未分化な幹細胞を形成することができるからであるという証拠を得た。我々はスクリーニングにおいて心室形成不能メダカ変異体を得た。この変異体は発生過程において心室筋細胞のみ増殖能力を失っており、ホモの変異体は心室形成ができずに胎生致死であった。この変異体のポジショナルクローニングをおこなった結果、バーシカンという心筋特異的な細胞外マトリックスに遺伝子変異が存在することを発見した。小型魚類の再生の研究、特に再生芽形成過程、脱分化の研究によりヒト組織の修復、幹細胞移植、tissue enqineerinqの基盤となる成果が得られた。小型魚類などの再生能力の強い生物において、どのように心臓再生現象が繰り広げられているのかを分子レベルで理解する事ができて、心臓再生ができないヒトとの違いを分子生物学的に説明できれば、ヒトにおける再生医療の進歩が望めると考えられた。
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