本年度はラット新生仔培養心筋細胞を用いた、in vitro実験を行った。慢性骨髄性白血病の標準治療薬として用いられているチロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブを用い、薬物心毒性とオートファジーの関連を検討した。オートファゴゾームの検出をmonodansylcadaverine(MDC)蛍光染色にて行い、蛍光強度測定により定量評価した。また、オートファゴゾーム形成の際に必要なbeclin I、LC3のWesternblotを行った。また細胞死の検討をLDH放出、及びトリパンブルーexclusion assayで検討し、アポトーシスを核の形態変化及びカスパーゼ3活性にて検討した。 イマチニブ(1-50μmol/L)は濃度依存的にMDC陽性オートファゴゾームの形成を増加させ、LC3、BeclinのI発現増加もともなっており、オートファジーを誘導することを見出した。イマチニブ10μmol/L6時間の刺激は心筋細胞にアポトーシスを誘導し、オートファジー阻害薬である3MAは心筋アポトーシス誘導を増強させた。一方イマチニブ50μmol/L6時間の刺激は著しいオートファジーとともに有意に細胞死を増加させ、3MAはこれを減弱させた。 イマチニブはミトコンドリア由来活性酸素種(ROS)を増加させることを、ROS依存性蛍光指示薬であるDCFにより確認したが、ROS消去薬はイマチニブ依存性オートファジー誘導に影響を与えなかった。一方AG957(bcr-ablチロシンキナーゼ阻害薬)はイマチニブ同様オートファジーを誘導し、細胞障害も同様に導いた。オートファジーは軽度の細胞障害時には、保護的に、一方大量のオートファジーが出現する状況では細胞死を促進性に働くことを見出した。
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