本年度(Hl9年度)は以下のことを明らかにした。 1.高血圧患者において動脈波反射の増加に伴って起こる中心大動脈血圧の上昇が、左室で過剰に浪費される仕事量(wasted effort)を増加させ、左室肥大を引き起こす。 2.動脈波反射の指標であるaugmentation indexやpulse amplicationは、従来の随時カフ血圧指標や家庭血圧指標と比べて、高血圧患者における降圧治療に伴う左室心筋重量の退縮をより良く予測する。 3.血管拡張性降圧薬による治療は、中心大動脈よりもむしろ末梢の筋性小動脈や細動脈に作用して波反射の大きさ(amplitude)を減少させ、ventricular-vascular ineractionの改善を介して左室肥大の退縮を促す。 4.地域一般住民において、動脈波反射に影響を及ぼす脈波伝播速度は、脳の微小血管障害(ラクナ梗塞や白質病変)と関連し、この関連は上腕血圧を含む従来の血管リスクの影響とは独立に認められる。 5.地域一般住民において、動脈波反射に影響を及ぼす脈波伝播速度は、腎のアルブミン尿と関連し、この関連は上腕血圧を含む従来の血管リスクの影響とは独立に認められる。 6.一般集団において認められる無症候性脳ラクナ梗塞は腎のアルブミン尿と相互に関連し、微小血管障害としての両者の結びつきに大血管の壁硬化が介在している。
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