血管内皮細胞の一酸化窒素(NO)の産生能は内皮機能に重要な役割を果たす。我々は、アルドステロン前処置によりATP刺激によって生じるPI3キナーゼ依存性eNOSリン酸化とNO産生が有意に亢進することを生化学的およびイメージングにより見いだした。このアルドステロンの非ゲノム作用は、近年臨床で使用されるようになった選択的MRプロッカーであるエプレレノンにより阻害される。このエプレレノンはアルドステロンとMRシグナルとは非依存的に膜力ベオラの構造蛋白でありeNOSの阻害作用を持つcaveolinlの発現を減弱させてeNOSリン酸化を亢進、NO産生を増大させる。興味深いことにエプレレノンは低濃度(10-9mol/L)でコレステロール代謝に関わるSREBPを活性化し、caveolinl発現を低下させる。この作用は培養細胞のみならずメタボリックシンドロームモデルラットにおいても大動脈caveolinl発現の減少と血圧非依存的にアセチルコリンに対する大動脈血管拡張反応亢進という形で観察された。近年アルドステロンの心血管に対する障害作用が注目されているが、その重要な因子であるリガンド(アルドステロン)および治療薬エプレレノンのそれぞれ急性作用とMR非依存的な作用を今回我々は明らかにした。これは内皮機能制御におけるマイクロドメイン、カベオラの役割や心血管病との関連を理解するために有用な観察結果であると考えられる。前半の所見はHypertension Research誌に報告し、後半の所見は米国心臓病学会2008(ニューオーリンズ)において口演発表をした。
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