メタボリック症候群の最終的な標的臓器は血管であり、動脈硬化性患の効果的な予防法を開発は先進諸国にとって喫緊の課題である。そこで我々は、メタボリック症候群発症の重要な責任分子のーつであるAMP-activated protein kinase(AMPK)の血管内皮細胞での働きを検討し、さらには抗動脈硬化作用の詳細な分子機序を検討中である。我々のこの研究での目的はAMPKの血管内皮保護作用の分子機序の解明することである。当該分野で従来使用されてきたAMPKのchemical activatorであるAICARを使わず、AMPKα1 subunitのThr172をAspに置換し、キナーゼ活性抑制部位のみを欠損した新規caAMPKmutantを作成して研究に用いた。そうすることによってより特異性の高いAMPKの作用が検討可能となった。このmutantは低酸素により誘導される血管内皮細胞のapoptosisを従来使用されていたcamutant体やAICARよりも有意に抑制することが明らかになった。この抗apoptosis作用の分子機序は、Akt/PKB系の無酸素条件での活性低下作用を抑制することであることを明らかにして、Hypertens Res誌で報告した。ドキシサイクリンで発現が調節できるTet-Onシステムでこのmutantおよびdominantnegative体を発現するシステムを開発し、細胞レベルでは作動することを確認した。さらに現在組織特異的にこれらの発現調節ができる遺伝子改変マウスを作成中である。今後これらを用いて、in vitroで明らかになったAMPKの分子機序が、生体でも血管内皮保護的・抗動脈硬化的に働くのか確認していく予定である。
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