研究課題
心血管疾患におけるケモカインStromal cell-derived factor-1(SDF-1)とその受容体CXCR4の役割を検討するため、マウスにマクロファージ・コロニー刺激因子(M-CSF)を投与することによりCXCR4陽性細胞を骨髄から末梢血中へと動員させ、血管傷害モデルおよび心筋梗塞モデルを作製して検討を行った。血管傷害モデルでは、傷害血管中膜のSDF-1発現が亢進し、骨髄由来のCXCR4陽性細胞が傷害部位へと集積することで、傷害後早期(7日)の新生内膜形成が有意に促進されることが示された。M-CSFの投与は傷害血管における再内皮化や末梢血中のCD34陽性/Flk-1陽性細胞の数には影響を与えなかったが、CXCR4阻害薬であるAMD3100を持続皮下投与すると、傷害血管へのCXCR4陽性細胞の集積および新生内膜形成は有意に抑制された。このことから、傷害血管における新生内膜形成の機序にSDF-1/CXCR4システムが寄与していることを明らかとした。一方、心筋梗塞モデルでは、梗塞部位においてSDF-1の著明な発現亢進が認められた。このモデルにM-CSFを投与すると、心機能と心モデリングが有意に改善することを見出した。この機序として、M-CSFによって骨髄から動員されたCXCR4陽性細胞が心筋梗塞部位に集積して血管新生を誘導することを明らかとした。これらの研究結果は、心血管疾患の病態によってSDF-1/CXCR4システムの果たす役割が異なっていることを示唆している。動脈硬化や心血管インターベンション後の再狭窄、心筋梗塞といった病態にSDF-1/CXCR4システムが大きく関与していることは疑う余地もないが、SDF-1/CXCR4システムを利用した治療法の開発のためにはより詳細な機序の解明や条件の検討が必要である。今後、SDF-1/CXCR4システムのさらなる検討により、動脈硬化や血管新生を標的とした新たな治療法が開発されることが期待される。
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