研究概要 |
19年度は全反射蛍光顕微鏡を用いた血管内皮細胞における組織型プラスミノゲンアクチベーター:tPAの開口放出動態の可視化を通して、tPAは開口放出後、細胞膜表面にそのN末端側の重鎖を介して滞留することを明らかにした。 20年度研究ではさらに膜表面滞留tPAとその阻害因子PAI-1との相互関係を検証した。(1)精製PAI-1の添加によりtPA滞留時間は短縮し、上清中には遊離tPAは認めず添加PAI-1濃度依存性にtPA-PAI-1複合体量が増加する。(2)PAI-1と複合体形成をしない変異tPA-GFPおよびsiRNAによるPAI-1発現抑制下ではtPA滞留時間が著明に延長する。これらの事実よりPAI-1は細胞表面滞留tPAと高分子複合体を形成しtPAの細胞表面からの遊離を促進することを確証した。さらにPAI-1およびウロキナーゼ型PA:uPA siRNAによるPAI-1・uPA同時発現抑制下において、プラスミン発色基質を用いた内因性tPA活性の検出を試み、PAI-1は細胞表面における内因性tPA活性を抑制するという結果を得た。 tPAは開口放出後、その重鎖を介して細胞表面に滞留するという血管内皮細胞特有の現象に加え、PAI-1は液相中のみならず細胞表面tPA活性をも制御するという新たな線溶活性調節機構を論文発表し(Suzuki Y, Mogami H, Ihara H, Urano T: Unique secretory dynamics of tissue plasminogen activator and its modulation by plasminogen activator inhibitor-1 in vascular endothelial cells. Blood 113: 470-478, 2009)、本研究成果を世界に向け発信した。
|