培養ヒト冠動脈血管平滑筋(HCASM)および培養ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をH_2O_2に15分間暴露後、生じたゲノム損傷および活性化する修復機転を観察すると、酸化的損傷(8-oxo-dG抗体を用いた細胞の免疫蛍光染色による)のみならず、二重鎖切断(リン酸化ヒストンH2AX抗体を用いたウェスタンブロットよる)が生じていることが確認された(HCASMにおいて〜12倍、HUVECにおいて〜3倍に増加)。またH_2O_2暴露により、HCASMおよびHUVECにおいてataxia-telangiectasia mutated kinase (ATM)、DNA-PK(いすれも15-30分がピーク)、Chk2、p53(いずれも1-2時間がピーク)などの活性化が認められ、修復機転が作動していることが示された。 ゲノム修復機構の重要性を探るため、siRNAの手法を用いATMあるいはDNA-PKをノックダウンしたところH_2O_2による細胞のアポトーシスが減少した。 さらにヒト動脈硬化巣においてリン酸化ヒストンH2AX抗体を用いた免疫組織染色により陽性に染まる細胞が確認され(非動脈硬化部は陰性)、動脈硬化巣においてはDNA二重鎖切断が増加していることが明らかとなった。二重鎖切断は動脈硬化巣を構成する内皮、血管平滑筋、マクロファージのいずれにも認められた。また動脈硬化巣ではゲノム障害修復因子の発現が認められた。 このような結果をふまえ来年度はapoE-KOとKu80-KOを交配した二重変異マウスを用いてゲノム損傷修復と動脈硬化発症の関連を直接的に証明する。
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