研究概要 |
平成19年度に作成したグルココルチコイド過剰による血管障害モデルマウスを用いて,ピタバスタチン0.3mg/kg/dayの経口投与が,酸化ストレスに及ぼす効果について検討した.この結果,デキサメサゾン(DEX)投与群では,内皮型-酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現低下と共に,酸化ストレスマーカーである尿中8-OHdGが増加し,DHE染色では大動脈壁におけるsuperoxide産生が亢進していたが,ピタバスタチンの投与により,これらはいずれも改善した.次に培養ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用いた検討では,10^<-5>MのDEX添加によりeNOS蛋白発現の抑制と共に,DHE染色ではsuperoxide産生が増加していたが,10^<-5>Mのピタバスタチン添加はこれらをいずれも改善した.さらに,ピタバスタチンは,eNOSプロモーター活性を亢進させる転写因子であるKLF2のmRNA発現とその発現を調整している細胞内シグナルであるERK5の活性化を亢進した.このようなピタバスタチンによる作用は,イソプレノイド中間体であるメバロン酸あるいはゲラニルゲラニルピロリン酸の同時添加により,完全に消失した,ピタバスタチンは血管内皮細胞においてグルココルチコイド受容体活性化による酸化ストレス亢進を抑制すると共に,eNOSプロモーター活性亢進を介してeNOS発現を増加すると考えられる,ピタバスタチンはこのような血管内皮細胞に対する直接的・多面的作用により,グルココルチコイド誘発性血管障害の新規治療法となる可能性がある.
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