平成19年度に行った臨床研究の成果を示す。【SCAST:Statins Coronary Artery Spasm Trial】 目的::冠攣縮に対するフルバスタチンの有効性を明らかにする。同時にカルシウム拮抗薬の冠攣縮に対する有効性の再検討とその必要投与期間を調査する。 対象症例:2回の冠動脈造影とアセチルコリン負荷試験について同意を得られた冠攣縮症例。 方法:multi-center Prospective Randomized Open Blinded End-point(PROBE)study 冠動脈造影像上の冠攣縮の最終判定は薬剤の割付にblindな中央委員が行う。 S-CAST研究は既に熊本大学の倫理委員会より承認を得ている。 結果:31例のフルバスタチン投与群(F群)と33例のフルバスタチン非投与群(非F群)に振り分け、冠攣縮誘発試験を投与前と投与後6ヶ月にアセチルコリンによる冠攣縮誘発試験を行った。その結果、F群では48.9%に冠攣縮の再発を認めたのに比し非F群では79.1%と有意に非F群で高率に冠攣縮の再誘発が認められた(p<0.0001)。このことにより、Ca拮抗薬に加えてフルバスタチンを投与すると、冠攣縮の誘発頻度が低くなることが明らかとなり、フルバスタチンが冠攣縮の新たな薬剤となる可能性がある。 さらに、基礎研究として、フルバスタチンは合成型スタチンであり、その合成過程において10個のcompound(合成物)が存在する。その10個のcompoundを用いて、一酸化窒素合成酵素(eNOS)遺伝子のレポーター遺伝子アッセイを行った。その結果、eNOS遺伝子発現を亢進させうるcompountが明らかとなった。現在、その物質について、eNOS遺伝子転写活性部位の同定を行っている。
|