スタチンによるLDL低下療法(LDL<100mg/dl)を既に受けておりかつ糖尿病ではない安定冠動脈疾患患者を対象としてピオグリタゾン投与群と非投与群にランダムに分けて糖代謝と脂質パラメーター、頸動脈プラーク変化を検討した。6ヶ月後にピオグリタゾン投与群において高分子adioponectinレベルとHDL、インスリン感受性は有意に上昇し、hsCRPと血糖負荷時のインスリン分泌は有意に低下した。頸動脈プラークでは、ピオグリタゾン投与により有意にエコー輝度が上昇した。このプラークエコー輝度上昇(プラーク安定化作用)は、高分子adioponectinレベル上昇と有意に相関していた。 ヒト動脈硬化病変に於けるカンナビノイドType-1(CB1)受容体の役割を検討するために、ヒト冠動脈プラークに於けるCB1受容体発現を免疫組織解析にて検討しその存在を証明した。動脈硬化病変進展stageにおいては、脂質とマクロファージを豊富に含むatheromatous plaqueでその発現は亢進していた。更にヒト冠動脈プラークDCA標本においてCB1受容体mRNA発現をRT-PCRにて検討し、不安定狭心症でその発現の上昇が認められた。ヒトマクロファージを培養しこれらに於けるCB1受容体発現をRT-PCRとWestern blotにて確認した。その発現はマクロファージ分化過程で亢進し、OxLDLとM-CSFで増強された。マクロファージ活性化に於けるサイトカイン産生はCB1受容体遮断薬で抑制されたことからCB1受容体遮断は抗動脈硬化作用を発揮する可能性が示唆された。 熊本大学病院循環器内科に入院した安定冠動脈疾患患者において、血中CD144-EMPレベルを測定し2〜3年間の脳・心血管疾患イベント(心臓死、脳卒中、急性心筋梗塞、不安定狭心症・胸痛での緊急入院、下肢切断、新規冠動脈病変に対する血行再建)の予後調査を行い、CD144-EMPが将来の心事故発生予測因子となるか検討した結果、CD144-EMPは、これまでの心血管イベント予知因子と独立して将来の心血管イベント発症予知に有用なマーカーであることが明らかとなった。
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