研究概要 |
ATP-Binding Cassette Transporter(ABC)A1はHDL形成に関連する一方、ABCA1の半分のサイズのトランスポーターであるABCG1も同様にコレステロール応答膜蛋白であることが知られているが、その存在意義、機能の詳細は依然明らかとなっていない。現在のところ、ヒトにおいてABCG1遺伝子欠損、変異の報告はなくその生体内での生理的機能の詳細は明らかとなっていない。本研究ではABCG1のプロモーター領域の遺伝子解析により遺伝子多型の存在を明らかとした。このABCG1プロモーターの-257T>G多型は転写活性を有意に低下させていた。虚血性心疾患患者におけるABCG1プロモーターの-257T>G多型の解析では、Gアレルを持つ患者では有意に冠動脈病変の重症度が低値であることが判明した。また、新規にスタチン投与症例において、そこの-257T>G多型の検討ではGアレルを持つ患者では血中HDL-C値の上昇率が低い傾向にあり,HDL-C/LDL-C比の上昇が有意に低かった.また,104例の抗高脂血症治療薬を服用していない循環器疾患患者を対象にしたABCG1プロモーターの-257T>G多型の解析では、Gアレルを持つ患者では血中TC,HDL-C,LDL-C値には違いは認められないが,cITP脂質解析にてfast-HDL亜分画が有意に低く,またslow-LDL亜分画が有意に高い結果であった.これらの結果は共通してABCG1プロモーターの-257T>G多型のGアレルが,動脈硬化促進的に働くことを示唆しており,ABCG1が動脈硬化防御機構の1つとして働いていることを示唆する知見である.
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