研究概要 |
肺気腫の発症機序として,加齢や喫煙のために肺胞構造を維持するシステムが十分に機能できなくなることが重要ではないかと考えられる。肺胞構造を維持するには,肺胞が常に修復されている必要がある。近年様々な細胞が骨髄由来幹細胞から分化しうることが示され,再生医療への応用が期待されている。COPDの主要なリスクファクターである喫煙と加齢は,肺の修復にどのような影響をおよぼしているかを,喫煙や加齢が骨髄幹細胞や気管支肺胞幹細胞に作用し,肺の修復にあたえる影響について研究した。私達は喫煙が骨髄由来前駆細胞の数や機能に影響を及ぼし,肺の修復機構を障害している可能性について検討した。喫煙曝露装置を用いて,マウスに喫煙曝露を行った結果,喫煙により血液に血管内皮前駆細胞は速やかに動員され,その後漸減した。また,骨髄・脾臓の血管前駆細胞数は喫煙により減少していた。一方肺組織中のVEGF発現量は喫煙で速やかに上昇し,その後減少してゆき,骨髄由来前駆細胞の動員や減少に関連があると思われた。喫煙や加齢のために酸化ストレスが増加すると,VEGF系シグナルが低下して,肺胞構成細胞にアポトーシスが誘導され,肺胞構造の消失をおこす。VEGF系シグナルなどの細胞増殖,分化促進因子の発現低下は,骨髄幹細胞を抑制して肺の修復能を抑制している可能性が考えられた。
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