研究課題/領域番号 |
19590887
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
花岡 正幸 信州大学, 医学部, 講師 (20334899)
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研究分担者 |
藤本 圭作 信州大学, 医学部, 准教授 (70242691)
太田 正穂 信州大学, 医学部, 講師 (50115333)
漆畑 一寿 信州大学, 医学部附属病院, 助教 (60362125)
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キーワード | アポトーシス / 遺伝子多型 / 酸化ストレス / 肺気腫 / プロスタサイクリン / TGF-β1 |
研究概要 |
1. 肺気腫の発症におけるtransforming growth factor beta 1(TGF-β1)遺伝子多型の関連 TGF-β1は、種々の細胞の増殖・分化、細胞外マトリックス産生、アポトーシス、さらに免疫機能に関与するサイトカインで、肺実質における肺気腫性変化と、気道におけるリモデリングの双方に関与している可能性がある。COPDの中で肺気腫に注目し、70名の肺気腫患者と99名の喫煙歴のある健常者との間で、TGF-β1遺伝子に存在する一塩基多型(SNPs)の頻度を比較検討した。8つのSNPs(rs2241712、rs1982072、rs1800469、rs1982073、rs2241716、rs4803455、rs6957、rs2241718)について、TaqManプローブとリアルタイムPCRシステムを用いてタイピングを行った。その結果、年齢、性別および喫煙歴の補正により、肺気腫とrs6957およびrs2241718との間に有意な相関を認めた。ハプロタイプの解析では、Haplotype 3の頻度について肺気腫群と対照群との間で有意な差を認めた。さらに、肺気腫群の呼吸機能データにおいて、気管支拡張薬吸入後の予測1秒量およびCOPDの重症度と、rs1800469およびrs1982073との間に有意な相関を認めた。以上から、日本人における肺気腫の発症にTGF-β1遺伝子が関与する可能性が示唆された。 2. ラット肺気腫モデルにおけるプロスタサイクリンの予防効果 肺気腫の原因として、慢性炎症、蛋白分解のアンバランス、酸化ストレスおよびアポトーシスなどが考えられている。プロスタサイクリンは抗炎症作用を有し、アポトーシスを抑制する。我々はプロスタサイクリン類似薬のべラプロスト・ナトリウム(BPS)を用い、煙草抽出液によるラット肺気腫モデルにおける予防効果を検討した。その結果、BPSは肺胞の拡大と破壊を抑制し、肺気腫の発症を予防した。BPSはアポトーシス、MMP-2およびMMP-9の活性化、TNF-αおよびIL-βの誘導を抑制し、抗酸化力を正常化した。さらに、BPSの肺気腫抑制効果は容量依存的であった。BPSは様々な経路を通じて肺気腫の発症を防止する可能性が示唆され、臨床応用に道が開かれる結果となった。
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