研究概要 |
本研究の目的は,抗腫瘍効果の高い樹状細胞(DC)ワクチンを開発するために,細菌由来の成分であるスーパー抗原をパルスしたDCを作製し,そのワクチンとしての有用性を検討することである.平成20年度も概ね研究実施計画の通り順調に実験を遂行することができた.しかし下記に記すが如くその有効性を更に引き出すため,遂行した実験の結果を基に追加の検討を加え興味深い結果を得た.具体的には平成19年度に作製したモデルを用いて,腫瘍植え付け後3〜7日目より,スーパー抗原をパルスしたDCを腫瘍に直接免疫し,作製したDCワクチンの接種を行った.更に腫瘍抗原を提示させたモデルを用いての検討も同様に行った.その結果ある程度のワクチン効果が見られ,腫瘍縮小効果も認められた.しかしながら更なる強力な効果が望まれたため,腫瘍投与前の免疫にてその免疫誘導能の確認を行った.その結果治療モデルよりも明らかに強力な抗腫瘍効果および抗原特異的CD8陽性細胞の細胞障害機能を誘導することを確認した.これらの結果と最近の報告(Immunity, 2008)を考慮すると,治療モデルとしての有効性の減弱には担癌状態における免疫抑制(regulatory T cellなど)の関与が強く示唆された.次ぎに,これらの抑制状態を回避或いは減弱させることを目的に,化学療法を併用したモデルを用いて同様な治療実験を行った.その結果,強い免疫誘導能および抗腫瘍効果が期待できる可能性が示され現在最終実験を行うとともに英文雑誌への投稿を準備している.
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