研究概要 |
本研究は、ヒト肺癌腫瘍組織を用いたマイクロRNAの網羅的発現解析と先進的プロテオミクス技術を駆使した網羅的蛋白質発現解析とを並行して遂行する事によって、その発現制御異常に関する知見の集積を図り、両者が相互に形作る制御ネットワークの解明を目指すとともに、マイクロRNAが肺癌発症・進展において果たしている役割を明らかとする事にある。今年度は、ヒト肺癌組織試料を対象とした網羅的蛋白質発現プロファイル解析を、質量分析器を駆使する事により遂行し、取得されたデータを基盤情報として、Fisher's exact test, Kruskal-Wallis test, SAMを用いたバイオインフォマティクス解析を行った。その結果、肺癌手術症例における術後再発、並びに予後に深く関与する蛋白質発現プロファイルの描出に成功している。さらには、抽出された肺癌臨床病態と関与の深い蛋白質プロファイルから、術後再発・予後を予測可能な判別モデルの構築を行うため、Signal-to-Noise, Weighted-voting algorithm,10-foldcross-validationを用いた解析を進め、高精度な予測モデルの構築に成功している。これらの成果を、JNatl. Can. Inst.に報告している。今後は、マイクロRNA発現プロファイル情報の取得を、TaqMan PCR法を用いる事により進めていき、蛋白質発現との相互制御の機構解明を目指し、さらには、肺癌発症・進展におけるその役割の解明について、検討を進めていく計画である。
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