癌抗原WT1を標的とした抗腫瘍免疫療法の確立を目指した基礎的実験、および、実際に肺癌などの癌患者にWT1ペプチドを癌ワクチンとして投与する臨床研究を続行している。 抗腫瘍作用をもたらす主なeffector細胞はCD8陽性CTLであり、WT1ペプチドワクチンはWT1特異的CTLを誘導する。我々は、以前に、そのWT1特異的CTLの誘導や働きを増強するCD4陽性ヘルパーTリンパ球をHLA-DRB1*0405拘束性に誘導できるWT1ヘルパーペプチドWT1_<332>を同定したが、このヘルパーペプチドが他のHLA class II分子にも結合しそのHLA class II分子拘束性のCD4陽性ヘルパーTリンパ球を誘導することを明らかにした。これは、このヘルパーペプチドをCTLエピトープとともにワクチンをして使用する時の適応患者の拡大につながる。 WT1ペプチドをMontanide ISA51アジュバントとともに投与するWT1ペプチド癌ワクチンの臨床試験を続行中であるが、Montanide ISA51アジュバントの代わりに、より強力なアジュバントと考えられるBCG-CWSを併用した臨床試験を開始し、肺癌患者にもBCG-CWS併用WT1ペプチドワクチンを投与した。さらなる肺癌症例の蓄積を予定している。また、比較的頻度の高い造血器腫瘍である骨髄腫におけるWT1ワクチンの世界で始めての有効例を経験し報告した。これは、WT1ワクチンの悪性腫瘍治療における有用性をさらに裏付けるものである。 WT1ペプチドワクチンを投与中の患者検体(末梢血など)の細胞レベル、分子レベルでの癌免疫の観点での解析を開始した。
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