研究概要 |
肺癌の粗死亡数は増加しているが、喫煙率の低下に伴い年齢調整死亡率は1995年より低下しつある。喫煙の関与しない肺癌は男性で30%、女性で70%は非喫煙者である。今後喫煙に無関係な肺癌の病因追求とともにそれを予防する本研究は大きな意味を持つ。 1)SP-CプロモーターによりExon19の欠失delE748-A752を肺のみに過剰発現させたEGFR遺伝子改変マウスを樹立した(2007年米国癌学会で発表,Cancer Science, revise中)。この遺伝子改変マウスは5-6週で多発性の肺腺癌が出現し、14週前後で腫瘍死する。肺のみで欠失変異を有するEGFRの過剰発現が認められた。肺の腺癌組織ではpEGFR、PCNA、TTF-1の過剰発現が認められた。類似の先行研究が米国ダナファーバー癌研究所、メモリアルスーロンケタリング癌研究所から発表されているが、二つの遺伝子改変マウスはともにテトラサイクリンのスイッチモデルを使用しており、腫瘍を惹起するためにはテトラサイクリンを投与し続けなければならないため、テトラサイクリン自体の抗腫瘍効果、テトラサイクリンと化学予防薬との相互反応の問題があり本研究には不向きである。 2)遺伝子改変マウスに6週令からゲフィチニブ(5mg/kg/5日/週)を経口投与すると30週以上にわたり腫瘍の発生を完全に抑制した。 3)ZD6474はEGFRのチロシンキナーゼとVEGFRのチロシンキナーゼを二つの分子を同時に阻害する低分子化合物である。ZD6474(5mg/kg/5日/週)を遺伝子改変マウスに6週令から経口投与すると同様に腫瘍の発生を抑制した(2008年4月米国癌学会で発表予定)。 上記、EGFRの関与した発癌に予想通り一時的には完全に腫瘍の発生を抑制している。肺腺癌の分子生物学的発生機序に従いその化学予防を行うという新しい概念を報告している。
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