研究概要 |
本研究の目的は,難治性呼吸器疾患の治療の一手段に,small interfering RNA(siRNA)を応用できるかどうかを検証することである.難治性呼吸器疾患として,肺線維症,リモデリングを伴う気管支喘息,肺癌の3つを考えている.それぞれの疾患の動物モデルに必要なmaterialの準備・作製を行い,Green fluorescence protein(GFP)を恒常的に発現しているGFPトランスジェニックマウスを繁殖・維持と,GFPを恒常的に過剰発現するLewis lung carcinoma(LLC)細胞(GFP-LLC細胞)の作製に成功した.昨年度は,これらのmaterialが,予定通り使用できるかの検証を中心に実験を行ったが,実際には当科に配備されている蛍光顕微鏡下にてGFPの発光を確認することが困難であった.そこで,抗GFP抗体による免疫染色により,GFP発現細胞や組織をほぼ均一に染色されることから,実験に使用を試みたが,染色過程に多大な労力を要し,定量化も困難であることが判明したため,本年度は,再度,蛍光顕微鏡による観察が可能かを検証した.当大学動物実験施設にキーエンス社製のBiozero蛍光顕微鏡が配備されたため,これを使用したところ,GFPトランスジェニックマウスの肺組織及びGFP-LLC細胞による腫瘍組織の蛍光を極めて鮮明に映し出すことが可能であることが判明した.そこで,GFPに対するsiRNA(GFP-siRNA)を合成し,GFPトランスジェニックマウス及びGFP-LLC細胞による肺腫瘍を保持するマウスに対して,GFP-siRNAを経気道投与し,Biozero蛍光顕微鏡にて観察したが,残念ながら蛍光の抑制は認められなかった.siRNAの使用量が少なすぎた可能性があり,今後の検討課題となった.
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