1、気道上皮がん化不死化規定遺伝子の解析 不死化規定遺伝子候補gene G発現ベクターを作製しテロメラーゼタンパク(TERT)発現ベクターとともに正常気道上皮に導入し、薬剤選択により安定クローンの樹立を試みた。TERT・SV40EA導入延命トランスフォーム気道上皮細胞ではgene Gは全クローン高発現しており、SV40+gene G共導入クローンも得られ10^6まで増殖したが、延命のみで不死化には至らず、gene GにTERT誘導能はないと考えられた。 2、気道上皮がん化不死化抑制遺伝子の解析 不死化抑制遺伝子候補gene S発現ベクターを不死化トランスフォーム肺線維芽細胞に導入し強制発現させたところ、クローン化効率が低下し、得られたクローンも早期にアポトーシスに陥ったが、不死化正常肺線維芽細胞に導入してもクローン化効率も形質も変化せず、gene Sはトランスフォーム細胞特異的不死化抑制遺伝子である可能性が示された。 別の不死化抑制遺伝子候補gene D発現ベクターを複数の肺がん細胞株に導入し強制発現させたところ、細胞が腫大して扁平化し、増殖抑制が認められる株が存在した。この遺伝子は、肺癌細胞株の一部でメチル化されており、癌抑制遺伝子である可能性が考えられた。 3、肺腺癌のテロメラーゼ活性・TERT発現、p16/RB経路不活化解析より、肺腺癌においては不死化のポテンシャルをもつ"幹細胞"由来の癌と、分化した体細胞からp16/RB経路不活化を経てがん化した癌が存在する可能性が新たに得られた。ゆえに、不死化抑制遺伝子の作用も両者で異なることが予想されるため、肺腺癌細胞株を追加購入し、がん化、不死化、増殖に関わる遺伝子の発現レベルおよび増殖速度を解析した。今後は、候補遺伝子の作用をそれぞれの群で評価してゆく必要性が考えられた。
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