研究概要 |
46例のARDSにおけるDIC発症の予測因子につき、SLAKや関連する分子であるKL-6,SLXK,PSGL-1などを含めて検討した。その結果、単変量解析では、SLAK、KL-6、SLXK、peak airway pressure、APACHE II score、SIRS criteria、Direct/Indirect causeがp<0.2であり、多変量では唯一SLAKが有意にDICと関係していた。これらの結果を現在投稿中である。この結果により、SLAKがARDSにおけるDIC発現を診断時に予測可能なバイオマーカーとなりうることが明らかとなった。また、SLAKの発現機構を明らかにするために、多数の肺癌細胞株のスクリーニングを行い、2株のSLAK産生肺癌株を見いだした。さらにヒトMUC1コア蛋白のトランスジェニック(MUC1Tg)マウスは、通常のマウスにはないKL-6が、血清および気管支肺胞洗浄液中に人と同程度の濃度で検出されることを明確にした。 今後、前向き試験においてcutoff値を確認する必要があるが、本研究によりSLAKがARDSの予後を改善しうるかどうか、すなわち上昇していれば早期からのヘパリン等の投与により、生存率が向上するかどうかを明らかにする臨床試験が計画できるものと考える。またその発現機構は、本研究によって見いだされた細胞株やMUC1Tgマウスを用いて明らかにすることができるものと考えられる。
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