本年度は、βデフェンシンの呼吸器感染症における臨床応用を目指して基礎と臨床の両面から以下の研究を行った。基礎研究では新規抗菌ペプチドであるβデフェンシンとプレクタシンの抗菌活性について、大腸菌を用いたcolony count assay法で評価した。さらに両抗菌ペプチドの抗菌活性に関する相加相乗効果を解析した。βデフェンシンによる炎症性サイトカインの誘導を検討するために、気道上皮細胞や血管内皮細胞の培養細胞と合成βデフェンシンを用いて、培養し、上清のサイトカインを測定した。臨床研究としては、慢性気道感染症患者の気道被覆液をマイクロプローブにより回収し、βデフェンシンの発現や亜型について定量を行った。ヒトの気道に対する真菌曝露とβデフェンシンの発現誘導について検討するために気管支肺胞洗浄液を用いたβDグルカンとβデフェンシンの定量化を行い、相関について解析した。その臨床研究の過程で、真菌への曝露が病態に関連している農夫肺で、気管支肺胞洗浄液中のβDグルカンが高値で、気道上皮からの炎症性サイトカインの誘導に関連していることを明らかとして論文発表した。これらは新たな知見である。また、びまん性呼吸器疾患において気道局所のβデフェンシン産生や病態生理学的意義についても検討を進め、当初の予定通り成果を挙げることができた。次年度は気道感染の動物モデルを用いてβデフェンシンの臨床応用のための研究を推進したい。(604文字)
|