研究課題
(目的)進行した胸膜中皮腫の治療法は確立されていない。中皮腫発症のメカニズムの解明が試みられ、そこで得られた知見を利用した新たな治療法の開発が期待される。我々は、肺癌および胸膜中皮腫においてWntシグナルの伝達体Dishevelled(Dvl)の活性化が、癌細胞の増殖や腫瘍原性に関与することを示した。今回、small interfering RNA(siRNA)を用いたDvl発現抑制の胸膜中皮腫細胞へ与える影響を検討した。さらにDvl発現抑制と抗癌剤シスプラチンとの併用効果を検討した。(方法)Dvl-3を高発現している胸膜中皮腫細胞3株(REN、NCI-H290、H28)を用いた。Dvl-3を標的としたsiRNAあるいはコントロールsiRNAを各細胞へ導入した。各細胞の増殖曲線、コロニー形成数、細胞周期の変化を検討した。さらにsiRNA導入後にシスプラチンを加え併用効果を検討した。(結果)3株ともに、Dvl-3を標的としたsiRNAによりDvl-3発現は抑制され、コントロールsiRNAを導入した時と比べ、細胞増殖、コロニー形成数ともに抑制された。細胞周期の解析では、Dvl-3の抑制によりGl期の増加およびS期の低下がみられた。さらにDvl-3を標的としたsiRNA導入後にシスプラチンを併用することにより中皮腫細胞の増殖は相乗的に抑制された。(結論)以上より、胸膜中皮腫細胞株では、高発現されたDvlによるWntシグナルの活性化が細胞増殖に関与していることが示唆された。Dvlの発現抑制によるWntシグナル伝達経路の遮断が既存の抗癌剤による中皮腫の治療効果を増強する可能性が示唆された。
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Anticancer Research 27
ページ: 4239-4242
呼吸器科 12
ページ: 296-303