研究課題
(目的)進行した胸膜中皮腫の治療法は確立されていない。中皮腫発症のメカニズムの解明が試みられ、そこで得られた知見を利用した新たな治療法の開発が期待される。我々は、肺癌および胸膜中皮腫においてWntシグナルの伝達体Dishevelled (Dvl)の活性化が、癌細胞の増殖や腫瘍原性に関与することを示した。今回、small interfering RNA (siRNA)を用いたDvl発現抑制が胸膜中皮腫細胞のタンパク発現へ与える影響を検討した。(方法)Dvl-3を高発現している胸膜中皮腫細胞3株(NCI-H290,H28,H2052)を用いた。Dvl-3を標的としたsiRNAあるいはコントロールsiRNAを各細胞へ導入し、48時間後に細胞を回収し、タンパクを抽出した。タンパクの2次元電気泳動を行い、各細胞におけるDvl-3発現抑制によるタンパク発現の変化を検討した。Dvl-3発現抑制により発現に変化を生じたスポットを回収してタンパクの同定を行った。同定されたタンパクの発現変化を、細胞へのsiRNA導入前後でウエスタンブロット法により解析した。(結果)Dvl-3発現抑制に伴い2細胞株で共通して発現が変化したスポット(H290とH2052で11スポット、H290とH28で21スポット、H2052とH28で51スポット)および3細胞で共通して発現変化した6スポットの同定を試みた。3細胞で共通して発現が抑制されたスポットから、Hsp70が同定された。ウエスタンブロット解析でも、H28ではDvl-3の発現抑制によりHsp70のタンパク発現の抑制が認められた。(結論)Dvl-3発現の抑制による中皮腫細胞の増殖抑制にHsp70が関与している可能性が示唆された。
すべて 2010 2009
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International Journal of Cancer 126
ページ: 651-655
Molecular Medicine Reports 2
ページ: 73-80