マイコプラズマ肺炎は一般には自然経過で治癒することもあり、通常はマクロライド系抗菌薬を用いて治療する。近年、M.pneumoniaeが喘息の原因となる可能性が指摘されている。そして、マクロライド耐性マイコプラズマによる感染症がマクロライドで治療可能であることも報告されている。また、マクロライド投与により気管支肺胞洗浄液中のリンパ球のCD4/CD8比が変化したり、少量マクロライド長期投与によりびまん性汎細気管支炎diffuse panbronchitis(DPB)が改善が知られており、マクロライドには抗菌作用に加えて免疫調整作用があると考えられた。以上より、マイコプラズマ肺炎の治療とは「マイコプラズマが惹起したホスト・ディフェンスの免疫異常をマクロライド系抗菌薬の免疫調整作用で整えた」という仮説を導いた。 そこで、マイコプラズマ菌体成分でも充分ヒトマイコプラズマ感染を再現できるのではないかと考え、マイコプラズマの可溶化精製物をマウスの気道に投与してマイコプラズマの肺炎モデルを作成した。本マウスモデルでは、気管支肺胞洗浄液中にリンパ球の有意な上昇を認め、気道に好中球のみならずリンパ球が集籏することを見出した。このマウスの気管支肺胞洗浄液のサイトカインを網羅的に解析することにより、本リンパ球の集籏には、IL-17、IL-6とKCも発現が増加していたことから、これらのサイトカインによるリンパ球の遊走が考えられた。本研究は、マイコプラズマの生菌を用いたマウス肺炎モデルとほぼ同じ結論であり、IL-17を刺激する為にはマイコプラズマの菌体成分だけで充分であることが示された。以上より、本反応は感染に惹起された反応ではなく、Host defenseの免疫反応であることが示され、マイコプラズマ肺炎発症機序が明らかになったと考えられた。
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