平成20年度は、培養細胞を用いてHIF-1遺伝子のノックダウンの影響について検討を行った。HIF-1遺伝子に相補的なヌクレオチド長の短い干渉RNA(siRNA)を作成した。ヒト血管内皮細胞(HUVEC)や気道上皮細胞(Bes2b)にこのsiRNAを導入してHIF-1の発現をノックダウンすることを目指した。導入直後の細胞ではHIF-1の遺伝子発現がほぼ消失していることが確認できたものの、一定時間培養後の細胞では導入効率が一定せず、HIF-1の発現が十分に抑えられていなかった。導入後の細胞に低酸素曝露やエンドトキシンなどの炎症性刺激を加えて、HIF-1および関連する分子であるVEGF、ET-1、PAI-1の発現を解析した。リアルタイムPCR法による遺伝子解析とウェスタンブロット法による蛋白レベルでの解析を行ったが、導入効率が一定しないことを反映してか、結果のばらっきが大きく、評価困難であった。アデノ随伴ウィルスベクターを気道内投与して、呼吸器系のHIF-1遺伝子をノックダウンすることも予定していたが、培養細胞でのノックダウンが確立していない段階での生体への応用は見合わせた。臨床研究としては、呼吸不全患者において、気管支鏡的マイクロサンプリング法により気道上皮被覆液を採取した。HIF-1の発現をウェスタンブロット法により評価したが、症例間で発現のばらつきが大きく、一定の傾向は見られなかった。呼吸不全発現からの時間経過や基礎疾患の影響があるものと考えられた。
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