研究概要 |
前年度に引き続いてオステオポンチン(OPN)の中皮腫細胞機能に及ぼす影響を検討する目的でOPNの発現の低い二相型中皮腫細胞であるMeso-1にOPN遺伝子を導入した遺伝子導入株(Meo-1/OPN)とコントロール株(Meso-1/Mock)を樹立した。これらMeso-1/OPNとMeso-1/Mockを用いて各種抗がん剤対する感受性試験を行ったところ、OPN遺伝子にてvinorelbine(VNR), gemcitabine(GEM), etoposide(VPO-16)に対して抗がん剤耐性を誘導しえることを明らかにした。本年度は、臨床検体を用いて解析を行う予定であったが、分担研究者の宮元の退職により、今年は引き続きin vitroにおける中皮腫抗がん剤耐性機序について詳細な検討を行った。Meso-1にOPN遺伝子導入することで元々発現しているhyaluronate (HA) receptorであるCD44のアイソフォームに変化が生じ、その結果,HAへの結合性が亢進することが明らかになった。すなわちOPNを遺伝子導入することでCD44の高分子量アイソファームが減少し、その結果HAとの結合性が増強した。HAのCD44への結合によりAktのリン酸化が生じ、その結果、抗がん剤くみ出しポンプであるMRPの機能亢進を引き起こすことが機序と考えられた。これらのOPN遺伝子導入による抗がん剤耐性は、抗OPN抗体、抗CD44抗体、OPNsiRNA, CD44siRNAででほぼ完全に消失した。また、きわめて教務深いことに、VNRとVP-16に対する耐性は上述のMRPが関与することが明らかになったが、GEMはそれ以外の機序が考えられた。難治性腫瘍の代表である悪性中皮腫の抗がん剤耐性克服のための標的としてOPNあるいはCD44は有用であると思われた。
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