研究概要 |
ラットを1回換気量10ml/kg体重,PEEP O cmH_2Oで3時間陽圧換気すると,肺組織の湿乾重量比が上昇し,broncho-alveolar lavage(BAL)細胞分画で好中球が増加し,BAL上清蛋白濃度が上昇した.組織所見では肺損傷が見られ,ventilator-induced lung injury(VILI)発症が確認された.あらかじめ,気管内に少量のエンドトキシン(LPS)を注入しておくと,VILIは増強した.VILI発症肺組織では,免疫染色によりTLR-2蛋白のごく弱い発現とTLR-4蛋白の中等度の発現が見られた.肺組織のreverse transferase-polymerase chain reaction(RT-PCR)でTLR-2mRNAの発現の増強傾向があり,TLR-4mRNAの発現が増強していた.ラット肺から単離したII型肺胞上皮細胞(II型細胞)に,30〜50cmH_2Oの陽圧を15/分,3時間負荷すると,負荷なしの細胞に比べて,免疫染色でTLR-2蛋白とTLR-4蛋白の発現増強傾向が見られた.VILI発症ラットでは,対照ラットに比べて血漿およびBAL液上清中のNO_2,NO_3濃度が高かった. 以上の結果は,VILIではII型細胞を始めとする肺細胞においてTLR-2とTLR-4の発現が増強することを示唆している.また,その過程でNO_2,NO_3などの活性窒素酸化物が動員されることを示している.これらの発現がVILIにおいてどのような役割をしているかをさらに明らかにしたい.
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