研究概要 |
ラットを1回換気量10ml/kg体重, PEEP0cmH_2Oで3時間陽圧換気し, ventilator-induced lung in jury (VILI)を誘導した. VILI発症肺組織からDNAを抽出しagarose gel電気泳動を行うと, DNA ladderが観察され,同細胞にアポトーシスが起こっていることが示された. VILI発症肺組織からII型肺胞上皮細胞(II型細胞)を単離し,核蛋白を抽出し,ゲルシフトアッセイを行った.その結果, NF-kBの核内への移動が示され, NF-kBの活性化が示唆された.抗p50, p65抗体によるスーパーシフトを観察したところ,活性化している主なNF-kBサブユニットはp50である可能性が示された. 対照肺に比べてVILI肺では,血漿およびBAL上清のcytokine-induced neutrophil chemoattractant-1(CINC-1)濃度が上昇していた.抗CINC-1抗体による免疫組織染色では,主としてII型細胞が陽性を示し,同細胞でのCINC-1産生の増加が示唆された. ラット肺から単離したII型細胞に,30〜50cmH_2Oの陽圧を15/分,3時間負荷すると,負荷なしの細胞に比べて,免疫細胞染色でCINC-1蛋白の発現増強傾向が見られた,同細胞から抽出したDNAでagarose gel電気泳動を行うと弱いDNA ladderの形成が認められ,アポトーシスが起こっていることが示唆された. 以上の結果は,VILIではII型細胞を始めとする肺細胞においてCINC-1の産生が増加し,同細胞のアポトーシスが増強することを示唆している,前回示したII型細胞におけるTLR-2, TLR-4の発現増強は, VILIにおいて炎症性ケモカインの産生増加を通してアポトーシスの発現にも関与する可能性が示された.
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