研究概要 |
炎症性メディエーターであるプロスタノイド(PGE_2,PGF_<2α>,PGD2_,PGI_2,TXA_2)およびロイコトリエン(Cys-LT)は喘息の病態に深く関与している。これらエイコサノイドには気道平滑筋収縮や分泌方進作用のある"stimulatory"メディエーター(Cys-LT,PGF_<2α>,PGD_2,TXA_2)と気道収縮抑制作用や抗炎症作用をもつ"inhibitory"メディエーター(PGI_2,PGE_2)がある。本研究は吸入ステロイド治療中の非喫煙・安定期喘息患者を対象とし喀痰中エイコサノイド濃度を測定しstimulatoryメディエーターとinhibitoryメディエーターの不均衡と肺機能や重症度など臨床指標との関係を検討する。 これまで喘息患者41人(男13名:女28名53±17歳)と健常者9人(男5名女4名34±3歳)より誘発喀疾を採取した。喘息群では軽症群(21名)、中等および重症群(20名)の2群に分けて検討した。 1.喘息群では健常群にくらべ喀痰6-ketoPGF_<1α>、(PGI_2の代謝物)モル濃度が有意に高値であった(0.67±0.83 vs 0.24±0.35,p=0.017)。しかしながら喘息群において喀痰6-ketoPGF_<1α>モル濃度は重症度との間に有意差はなかった。 2.PGE_2,PGF_<2α>,PGD_2,TXB_2およびCys-LTの各喀痰モル濃度は健常群と喘息群で有意差はなかった。 3.Cys-LT,PGF_<2α>,PGD_2,TXA_2各モル濃度の和と6-ketoPGF_<1α>,PGE_2の和との比は健常群と喘息群で有意差はなかった。喘息群において上記の比と重症度、喀痰炎症細胞分画および肺機能との間に有意な相関はなかった。 現在までに8名の喘息患者において胸部CT検査を施行済みであり今後これら炎症性メディエーターとCT上の気道壁肥厚および喀痰TGFβ1濃度との相関を検討予定である。
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