マクロファージ遊走阻止因子(MIF)は、自然免疫を司る上流因子として知られ、近年腎疾患の発症進展における役割の面においても注目きれている。今回の研究では、腎症におけるMIFの役割を、MIF情報伝達の関する側面や、Toll-like receptorとの相互作用、J-activating binding protein(Jab1)に対する作用などの側面から探求、またMIF DNAワクチンの効果を実験腎炎において検討する事を目的としている。まず本研究に使用する実験腎炎についてであるが、糸球体硬化モデルとして、adriamycin(ADR)腎症(Balb/cマウス)、尿細管間質障害モデルとして、マウスcyclosporine(CyA)腎症(ICRマウス)を確立した。ADR腎症において、糸球体構成細胞及び尿細管間質におけるMIF及びTLR-4の発現上昇を認めた。また、メタロプロテアーゼ・ディスインテグリンファミリーに属するADAM15分子の発現増強がMIF発現と共に認める事など新たな知見が得られた。CyA腎症においては、尿細管・間質にMIF、TLR-4の発現を認め、CyAによる尿細管毒性のメカニズムにおける関連を示唆した。現在、低酸素ストレスとの関与を含めメカニズム解析を進めている。以上、平成19年度においては、代表的な腎症モデル動物におけるMIFの関わりの解明に重きを置き、次年度においては、糸球体、尿細管上皮細胞におけるPAMP認識の可能性、そのメカニズムを含め探求をすすめる。
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