MIF(macrophage migration inhibitory factor)は、自然免疫を司る上流因子として知られるが、近年腎疾患発症進展における役割の面において注目されている。本研究では、腎症における役割を情報伝達や腎炎発症・進展を司る関連分子との関連から解明する事を試みた。MIFのレセプターとしては、CD74 (MHC class IIインバリアント鎖)が知られる。今回、代表的な巣状糸球体硬化症モデルであるアドリアマイシン腎症を作製し、同分子の動態を調べたところ糸球体細胞等にCD74発現増強が非常に早期にみられる事が明らかになった。MIF欠損マウスにおいては、アドリアマイシン投与による腎組織障害が軽症である事を事前に明らかとしており、糸球体細胞によるCD74分子の発現性の制御がMIFによる組織障害機転のキー因子であ旨る可能性が示唆されてきた。現在、CD74と共にレセプター複合体を形成するCD44分子発現性との関連の解析を進めている毅階である。また、移植領域、腎炎、ネフローゼ症候群の治療に広く使われる薬剤であるシクロスポリンが、腎糸球体細胞によるMIF、CD74、CD44、他関連分子発現性に与える影響についても検討している。シクロスポリンをはじめとするカルシニューリン阻害剤による慢性腎障害の機転においても、尿細管上皮細胞におけるMIF発現が関与する事が明らかになってきている。現在、引き続きモデル動物を用いた研究を中心に検討を継続し、結果総括とする予定である。カルシニューリン阻害剤による腎障害は、同剤の使用頻度が増えるにつれ避けることのできない深刻な問題となりつつあり、本テーマについても研究をすすめていくことは大変意義のある事と考える。
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