平成20年度は以下の点を明らかにした。 1. 腎遠位部尿細管サイアザイド感受性NaClトランスポーター(NCCT)の先天的異常の脱水性疾患であるギテルマン症候群に着目し、この血圧調節機構やNaCl代謝のみならず、生体全体へのメタボロームへの影響を解明することを目的とした。まずNMR(核磁気共鳴)メタボローム解析系を確立しヒト生体材料(尿、血液)を用いて代謝産物の一斉分析を実施した。僑雑物の多い尿・血清・血漿の採取とNMR用サンプリング条件を確立した。高分子成分を除去するための分子ふるいやCPMGパルスの検討を行い、後者の有効性を明らかにした。 2. 慢性腎臓病(CKD)患者の血漿のプロトンNMR測定を行い、スペクトルパターンの主成分分析を用いて病態進行ステージを類型した。ことに最終ステージの透析患者の代謝変動を調べるため透析前後の多検体測定を実施した。 3. その結果代調物の変動が包括的に把握できた。腎機能の評価に使われるクレアチニンの変動はもちろんのこと、それ以外にトリメチルアミンNオキシド、グルコース、ラクテート、アセテートの変動が明らかになった。体内での代謝の亢進が示唆された。このようにあらかじめターゲットを決めないメタボロミクス法では、予期せぬ代謝物の変動を捉えることが可能であることを示した 4. ギテルマン症候群患者の血液を用いてメタボローム解析を実施し、主成分分析にて代謝物のパターンを類型化した。 5. CKDステージの初期段階の病態予測を目的として各段階の血漿のメタボローム解析を行った。
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