研究概要 |
米国人口統計調査において、腎機能低下の合いに応じて心血管イベントが有意に上昇し、総死亡率が有意に上昇することが示された(NEJM351:1296,2004)。同様の検討はNipponデータとして報告されており(Circ J 70:954,2006)、やはり腎機能低下に応じて心血管イベント及び総死亡率上昇が確認されている。また、ICUでは種々の要因による急性腎不全患者は約25%を占めており、従来の急性腎不全診断の指標に加えて新たな予後との相関を見通せるような指標の出現が望まれている。 今回、新規マウス慢性腎不全(CKD)モデルを確立するとともに、2つの急性腎不全(AKI)モデルについて検討し、いずれにおいても尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)は腎疾患を早期から既存のマーカーよりも高精度で診断できる有用な新規バイオマーカーであること、AKI、CKDいずれにおいても尿中L-FABPは腎疾患の治療効果もモニタリングできるバイオマーカーであること、尿中L-FABPは血中レベルとは異なり、腎障害時に近位尿細管から管腔中へ放出される尿細管ストレス感知分子であること、腎尿細管でのL-FABP発現は尿細管自体のViabihtyを示すこと、さらにL-FABPは腎での酸化ストレス・脂質毒性(lipotoxieity)を尿中へ排出することで腎障害を減弱させる腎保護蛋白であることを確認した。
|