研究概要 |
Asymmetric dimethyarginine (ADMA)は内因性nitric oxide synthase (NOS)の阻害物質であり、ADMAは心血管系疾患のリスクファグターとして重要である。ADMAは(Dimethylarginine dimethylaminohydrolase (DDAH)により代謝される。慢性腎不全では血中ADMAの増加がNOの産生を抑制し、腎血流量の減少、血圧上昇、腎障害進展に関与している。DDAHにはDDAH IとDDAH IIの2つのisoformsが存在する。DDAHのisoformsの血管内皮、平滑筋における役割の違いをGeorgetown大学Wilcos CS教授と共同研究でDDAH I,DDAH IIの遺伝子発現をsiRNAにより抑制した検討した。血管内皮および平滑筋には主にDDAH IIが発現し、DDAH IIのsiRNAにより血管拡張反応が抑制された。一方、DDAH Iはほとんど発現がみられず,DDAH I siRNAの血管反応に及ばす効果はみられなかった。 腎皮質ではDDAH IがDDAH IIより発現が多く、DDAH I siRNAにより血中ADMA濃度が増加したが、DDAH II siRNAは血中ADMAには影響しなかった。腎臓ではDDAH Iは近位尿細管に、DDAH IIはmacula densa,遠位尿細管、血管平滑筋、内皮に存在した。糖尿病性腎症ではDDAH Iが減少し,血中ADMAが増加することを示した。Angiotensin receptor blocker(ARB)のtelmisartanはDDAH Iを増加し,ADMAを抑制しNO bioavailabilityを改善した。DDAH発現増強によりADMA濃度を減少し、腎血流量の増加、腎保護に働くと考え、ARBなどによるDDAH発現調節が糖尿病性腎症の治療戦略になりえることを示した。また、ARBはADMA産生に関与するPRMTを抑制することを示した。なお、研究の過程で,血管内皮、pedocyteにアルブミンがendocytosisにより取り込まれ,eNOS,DDAHなどの内皮機能に影響したり,podocyte障害に影響することがわかり、アルブミン自体がどのように濾過され糸球体障害を起こすか研究が派生した。DDAHによるヒストンメチル化調節はeNOS発現調節に関与している可能性が示唆され検討している。
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