研究概要 |
VEGF-Aはその受容体であるVEGFR-1およびVEGFR-2を介して内皮細胞の恒常性の維持に重要な働きをしており、NOはVEGFR-1を介した情報系の下流で働くと考えられている。今回、我々が研究対象としているCaM-Tgマウスは、早期より高度の高血糖とヒト糖尿病性腎症に特徴的な病変(結節性病変・滲出性病変・メサンギウム融解・輸入・輸出動脈硬化など)が観察される。このモデルでは、VEGF受容体の発現には変化はないが、VEGF-Aの発現亢進とeNOS発現低下がみられ、結果的にVEGF受容体を介する情報伝達系にアンバランスが生じ、その結果内皮細胞障害が進行すると考えられる(VEGF/NO uncoupling現象)。この成果は、J Am Soc Nephrolに投稿し、受理され、現在in pressとなっている。 一方、尿細管・間質障害に注目すると、高血糖発症直後から、間質での有意な血流低下が認められ、糖尿病性腎症では、糸球体病変に続発して尿細管・間質障害が発生する前に、糸球体病変とは独立して間質障害が初期から進行する可能性が考えられる。このため、尿細管・間質における血流に影響を与える可能性のある分子としてNOとH2Sに着目し、これらの合成酵素であるeNOS,iNOS,CBS,CSEの発現について検討し、これらの関与の裏付け実験を継続中である。 CaM-Tgマウス1,2,3カ月令の尿細管におけるeNOS発現は経時的に野生型に比べて経度減少する。一方、H2Sの合成酵素であるCBSは野生型に比べて増加しており、間質での血流低下に対応して発現亢進し、自己防御的に作用している可能性が考えられ、NOとH2Sのdonorの投与実験を行っている。
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