研究概要 |
我々は、糖尿病性腎症の発症におけるMKを介するmicroinflammationの重要性及びVEGF/NOシグナルの重要性を確認した。平成20年度は,VEGF-AのinducerとしてBasiginが糖尿病性腎症発症に関与するかを中心に培養内皮細胞及びCaM-Tgマウス、さらにBasigin欠損型マウスを用い検討した。 「研究成果」培養内皮細胞に高血糖刺激を行い、またCaM-Tgマウス腎臓でのBasiginの発現誘導を検討したが、有意なBasiginの発現亢進は確認できなかった。これらの結果から糖尿病性腎症においては、VEGFのinducerとしては作用しないと考えた。次にBasigin欠損マウスを用いて、虚血再灌流モデルを作成し、炎症への関与を検討した。Basigin欠損型マウスは野生型に比べ、虚血による腎障害が軽度に終息する傾向があった。さらに解析を進めると、Basigin欠損型マウスの腎組織には、好中球の浸潤が野生型に比して有意に減少していた。マウス腹腔内チオグリコネート刺激にて得た好中球を用い、マウス血管内皮細胞を不死化したF2細胞との接着をbinding assayにて評価したところ、野生型のほうが内皮細胞への接着が多かった。さらに、Basigin上の糖鎖に注目し、リコンビナントE-,P-selectinとの接着実験を行った結果、Basigin上の糖鎖がE-selectinの新たなリガンドとして働き、炎症を誘導することを確認した。糖尿病性腎症においても、内皮細胞上のBasiginがE-selectinのリガンドとして関与し、糸球体内へのmicroinflammationを誘導し、糖尿病性腎症の発症・進展に関与すると考えた。
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